テレビで「純金積立」のコマーシャルが流れていて気になった。
いや、最近日本で金1グラムあたりの相場が1万500円を超えたから純金積立に興味を憶えたわけではない。そうではなくコマーシャルで流れてきた聞き覚えのある曲に気を取られたのだ。その曲とは小畑実の「星影の小径」だった。
で、どうしてその曲が気になったかというと、歌っていたのは丁字路sというブルースデュオで、伊東妙子さんのパワフルな歌声が気になったからだった。「星影の途」はわたしとて、はさすがに小畑実というよりもちあきなおみのカバーなのであって、ちあきなおみが歌うのだからどうしても囁くような抑えた歌い方に馴染みがあるわけ。それをブルースで力強く「静かに静かに 手をとり手をとり あなたの囁きは アカシヤの香りよ」と歌われてもなんだかまったく別物に思えたのだった。
楽譜には「演奏記号」と呼ばれるものが付いていたりする。速度記号とか発想記号とかが含まれる。それらは「重要であるが記譜法上必要不可欠な要素ではない記号をいう」(Wikipedia)のだそうで、なんだか存在それ自体がちょっとややこしい。だけど、演奏する側にとってはやはり気になる記号ではある。作曲者の意図を推し量る上でも「必要不可欠ではない」とは言えまいに。
不思議なことに、わたしたちが手軽に手にできる例えば「讃美歌21」にある楽譜には、「速度記号」や「発想記号」がほとんどない。原詞原曲タイトルと作詞作曲者のほかはメトロノーム記号ぐらい。しかもこのメトロノーム記号、凡例には「これに縛られず、それぞれの状況に応じてテンポを決めてください」と書いてもある。だから教会によって同じ賛美歌がまったく違った響き(スピードはもとより曲から受ける感覚までもが)を持つことは十分にあり得ることなのだろう。
もちろんそれで良いのだけれどね(やはり私はちあきなおみの歌う「星影の途」が好きだぁ。 ボソッ)。
2023
29Oct